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蠅について愚考する [身辺雑記]

 私の生息地はそろそろ早朝外気温は氷点下が続く、冬の始まりだ。もうひとつ、築8年程になる私の住居は高断熱高気密の造作なので冬でもそこそこ暖かい。住宅を新築するにあたって燃料である灯油代を節約したいがために結構私は思案したのだった。ところが、だ。

 高断熱高気密の家には盲点があった。屋外が寒くなって居場所が苦しくなったハエがどこかから紛れ込んできて家の中を我が物顔で飛び回る。我が世の春を謳歌しているかのようこの闖入者が家の主としては大変憎々しい。 思い出すと、築40年以上にもなる私の実家は冬には大変寒い家だったのでハエ共が威勢のいいのはせいぜい9月いっぱいくらいまでであって10月ともなれば家の中はすっかり寒く、ハエなどどこかへ失せているのが常だった。私が実家の厄介者であった頃、家の造作についてしばしば悪口を叩いたものだがあれはあれで一つくらいはいい事があったのだと少々反省したりもする。しかし一度口をついて出た言葉は引っ込まないし、発せられた言葉はそれを受け止めた人のものでもある。私は、甲斐性もないくせに年がら年中文句ばかりたれているろくでなしの倅、という状態で家を出た。

  (1)全体、ハエなどという生き物に私は子面憎い以上の感情はない。羽音をたてて飛び回っている様子を目にすると無条件に頭にくる性分だ。これが仮に、猫にでもじゃれつかれるような場面であればそれなりに余裕をかまして少しばかりは嬉しいような気分でもあるのだろうが体にハエがとまるとなると何故か腹立たしい。

 (2)只今、NHKで爆笑問題のメンツが東大名誉教授である東氏の所を訪ねる番組を放送中である。生物力学という学問分野があるらしい。トンボの飛行能力について論じている最中だが、こと飛行能力に関する限りハエに勝る生き物はないのではないかと私は確信している。トンボは確かにたいしたものだがやはりハエには敵うまい。空中での急激なターン、ホバリング、などなど、ハエの飛行能力は傑出しておる。しかしこの特質について私は畏敬の念など鼻くそ程にも抱いてはおらず、 ただただ腹立たしい生き物の腹立たしい生態としか思っていない。

 (3)30年程前に亡くなった私の父は剣道の師範であり、警察などにも教えに行っていた一端の剣士だった。一事は万事に通じるというか、彼はハエ叩きの名手でもあった。父は一度ハエに狙いを付けてハエ叩きを手にすると殆ど百発百中の確率で仕留めてみせたのだった。ハエの背後からそろそろとハエ叩きを忍ばせて行って一瞬でパシッ!と決める、そのときのハエ叩きの出の早さは今考えても神懸かり的なものがあった。面を打つ要領であるらしい。父は息子のうちの誰か一人くらいは剣道に取り組んでくれることを期待していたのだそうだが誰一人として興味を示す息子はいなかった。結局、父親程の反射神経も動体視力も引き継ぐことのなかった息子である私は今日も空しく力任せにハエ叩きを振り回しては空振りを繰り返し、苛立たしい気分を増大させ続ける。父の意向に添って剣道のたしなみでも身につけていれば少しは戦果を挙げることが出来たのかもしれないという謙虚な反省がない。

 (4)冷静になって居間を飛び回るハエの数を数えてみると合計6匹程だった。しかし不思議なもので、例えば6匹のカブトムシだとか、6匹のチョウチョに比べると6匹のハエというのは何かものすごく多い個体数に思える。個体が存在することによる不快さの度合いが一次関数的な増え方ではないことにもハエの特徴がある。すなわち、一匹のハエが部屋を飛び回ることによる腹立たしさが仮に1とすると、六匹では6ではなく、36とか48くらいの不愉快さだと私はテキトウに数値化してみたくなるのである。(注)私はカブトムシやチョウチョを家の中で飼ったことがある訳ではない。

 (5)ハエの行動のうち最も頭にくるのは眠っている最中、顔面にとまることだ。大口を開けて高いびきを決め込んでいるときには口の中に飛び込んでくるときがある。鼻の穴の近辺をうろつき回るときもある。絵に描いたような安眠妨害だ。目覚めとともに殺意を覚える生き物というと今のところハエ以外には思い当たらない。寿命が尽きかけて飛行能力の衰えたハエはなおいっそう厚かましく人の体に取り付きたがる傾向がある。私のような運動神経の鈍い人物であってもどうにか対抗措置のとれる一種のチャンスな訳だが、生き物の命を殺めるという行為について、ことハエに関する限り私はいささかも良心の呵責を自覚しない。
 全人類的に、腹立たしい生き物についてのアンケートをとる機会があったとして、ダントツの一位となるのは間違いなくハエであるはずだと私は確信している。


タグ:ハエ 不快
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いっぷく

ハエにはあまりお目にかからないのですが、まだハエが飛び回る方が自然環境がいいということなのでしょう、しかし家の中には入ってきてほしくないですね。
ハエの俊敏な動きはすごいけどお父上の技はすごかったんですね。
by いっぷく (2008-11-19 07:24) 

shim47

いっぷく様 コメント有り難うございます。
身内の私が言うのも何ですが、父のハエ叩きについては妻であるところの私の母なども未だに取り柄として真っ先に挙げるほどの腕前でした。彼は剣道五段の腕でしたがこういう役立て方もあるようです。
 それともう一つ、私の学生時分の友人には「離陸直後のハエを素手で捕まえる」という特技の持ち主もおりました。
by shim47 (2008-11-19 16:25) 

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